神戸連続児童殺傷事件の犯人少年A(当時14歳)が手記を書いて発売された。予想よりはるかに高いレベルで「人間」を取り戻していることがわかって安堵した。鋭い洞察力を持って自分を分析する力に驚かされた。これほどの人間性と知性を持った人間がなぜあのような事件を起こさなければならなかったのか?この手記によって最後の謎が解き明かされることになった。

多くの国民に衝撃を与えたこの事件について再度検証したい。事件の詳細や背景などについては多くの資料があるので省略し、異なる視点から見て行きたい。

1.     両親の教育の誤り?

事件発生時から「親の育て方が悪い」と指摘する声が多かった。誰でも考えそうなことだが多くの少年事件のように劣悪な成育環境があったとは考えられない。母親の手記でもそう思ったが少年の手記でそれはより明らかになった。両親も兄弟もやさしく思いやりがあり愛情に溢れた家庭であったことは疑いようがない。事件後も見放すことなく愛情を持ち続けている家族の姿が手記には溢れている。「甘やかしすぎ」たのでは?という方もいるだろうが放任していたわけでもなくそれが事件に結び付くことはない。家庭環境に事件の背景は無いという結論である。

2.     発達障害であった事実

「怖がり」で「臆病」と母親が評していたこと。幼稚園の年長の頃3回ほど自家中毒(ストレスによって嘔吐、倦怠感、蒼白、腹痛、食欲不振、頭痛などの症状が現れる)にかかっていた事実。精神鑑定によって直観像素質者(瞬間的に見た映像をいつまでも明瞭に記憶できる)だったことがわかっていること。これらのことから少年が発達障害であったことは明らかである。発達障害は「ストレスに弱い遺伝特性」を持つ子どもに現れる症状である。

3.     統合失調症を発症していた事実

小学校3年生の時に父親に強く叱責されて訳の解らないことを口走るようになって精神科の診療を受けている。これは統合失調症の初期症状なのだが「軽いノイローゼ」と診断されている。投薬は確認されていない。

5年生の4月に祖母が死亡。祖母の死後、ナメクジや蛙を解剖し始めたと言われている。妄想が顕著に窺えるようになり、統合失調症が著しく悪化していることが読み取れる。このことから祖母の死のストレスによって人格に異常をきたしたのではないかと多くの心理学者が考えた。

4.     覚醒時興奮という統合失調症

祖母が亡くなって間もなく盲腸の手術を受けている。全身麻酔から覚める際に暴れ母親を罵倒している。これは「覚醒時興奮」と言って十代に多い症状だと言われている。本人はそれ以上でもそれ以下でも無いと思っているがこれが本格的な「統合失調症」の始まりだったと思われる。これはこの手記によって初めて明らかにされた事実で、このことによってすべての謎が解けた。この症状はタミフルの副作用と同じことでNMDA受容体の機能低下と前頭葉神経細胞のアポトーシスを示す。ストレスに弱い遺伝特性に多発し、思春期・ストレス時にはその発症率は極めて高くなる。理性や人格が半永久的に喪失する。タミフルの副作用が一時的なものではなく半永久的な「感情の異常」が続くことはほとんど知られていない。インフルエンザ脳症も同じメカニズムで起きる。麻酔薬はストレスホルモン「コルチゾール」と同じ働きをする。これを無害化する酵素に問題があるのが「ストレスに弱い遺伝特性」である。タミフルの副作用もインフルエンザ脳症も十代以下に多く「日本人に特異的に多発する」傾向がある。これは偶然の一致ではない。これが彼を「酒鬼薔薇」にした原因である。

5.     飲酒と喫煙の事実

中学に入ってから飲酒や喫煙を繰り返していたことがわかっている。思春期の飲酒や喫煙は「ヤングアルコホリック症候群」を引き起こし統合失調症を悪化させる。ストレスに弱い遺伝特性を持つ人間には顕著にこの症状が起きる。この症状が事件への直接の引き金になった可能性が高い。

6.     統合失調症は理性や社会性を失い、認知障害(物事を正しく判断し行動することができない)、妄想、幻聴などが起きる病気である。現在主流のDSM基準では少年が統合失調症であるという診断はできないし、治療薬である「抗精神病薬」は一時的に症状を抑えるだけで「治療」には全く役に立たない。

7.     文学的才能にあふれていた事実

事件における脅迫文や声明文からは中学2年とは思えない文章力、考察力、洞察力が窺える。国語の成績が悪かったことから冤罪では?という声があがったほどである。

しかし、国語の成績など何の指標にもならない。少年にとっては国語の授業など「子供だまし」程度のもので本気になる価値もなかったのだろう。少年の能力はそれをはるかに上回っていた。これは発達障害の一つの特徴でもある。少年にはすぐれた文学的資質があった。うまく育てられればそれを生かすことができたはずだった。手記にはその才能があふれている。

8.     脳に異常がないという誤診

精神鑑定の際に脳の検査も行われている。異常は確認されていないという結果であるが、多くの反社会性人格障害者には前頭葉の萎縮と脳波の異常(爬虫類に近い脳波)が見られることがわかっている。もちろん統合失調症でも同じことなので「異常なし」という結果はあり得ない。脳腫瘍などといった器質的に顕著な異常ではないので精密な検査が必要である。ずさんな診断が「責任能力はある」という誤った結果を生む。

9.     矯正教育の失敗

少年は医療少年院に送られ特別なプログラムの下矯正教育が行われた。しかし精神科医指導の下で行われた薬物治療を併用した治療は症状を悪化させ、いじめによって度々激しい発作が起き、一時は統合失調症の急性期を示す「錯乱」状態まで悪化したことがわかっている。

10.  家族の愛が更生させた

幸いにして精神科医から解放された社会復帰は人に恵まれて順調に進み、その中で豊かな人間性が養われていったようだ。彼が更生できた最大の要因は「家族の愛情」があったからだろう。誰かに愛されていなければ人間性は育たない。更生できるかできないかの差はそこにあると考える。劣悪な成育環境で育った人間は更生できる可能性は少ない。


バカげていると思われる方も多いだろうが学術的、科学的に十分な根拠がある。起きている事実はこの考え方が正しいことを示している。二度とこのような事件を起こさないために真実は明かされなければならない。
詳細は下記を参照してほしい。


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