醜聞に垣間見る精神科薬の副作用「退行」の痕跡

 大阪の小学校に乱入した犯人が包丁で次々と児童を刺殺した、日本の犯罪史の中でも際立つ悲惨な事件である。
 この犯人の経歴は少年期から陰湿ないたずら、動物虐待、暴力、強姦、強盗、恐喝など信じがたいほど数多くの醜聞にまみれている。罪を逃れるために精神科を利用したという前代未聞の作戦によって、この事件以降精神科の副作用説は支持されない結果となってしまった。
 精神科と関わる以前から暴力や犯罪の存在した「ごくまれな」事件の一つである。こんな犯人の肩を持つような発言をしたら全国民を敵に回しかねない。もちろんこの犯人が「本当は良識のある人間だった」などと言うつもりはない。しかしながらこの犯人も間違いなく「感情の幼児化」を発症していて精神科と関わらなければこの事件は起きなかったということだけは確かである。
 17歳の時に初めて精神科に行き、以降断続的に精神科と関わっている。21歳の時からは母親と共謀して「罪を逃れること」を目的にした詐病だったと後に供述している。全日空ハイジャック事件にヒントを得た作戦なのだろうが、これが精神科を甘く見すぎた「地獄」への入り口だった。精神科と関わる度に「感情の幼児化」が起き幾度も幼児の感情に引き戻されている。もともと素行が悪すぎるので退行が起きても誰も気づかない。その後の再成長時に愛情が育まれる事は無く、叱責され否定され続けることによってもともとの性格の悪さに加えて「負の記憶」が積み重ねられ破滅的な事件に繋がって行くのだ。
 もともと持ち合わせた性格は悪かったが、犯人は一度も大人になる事ができなかった哀れな幼児なのである。その根拠となる事実が意外な所に潜んでいる。20歳の時にどういうわけか父親を残し母親と二人で部屋を借りて暮らし始めている。おそらく暴力で母親を脅して実行したことなのだろうが、この生活の異様ぶりを週刊誌はこぞって取り上げ、異常なマザコン癖から近親相姦を疑うものまであった。
 普通ならマユツバものの内容だがこれはおそらく事実だと思っている。もちろん暴力で脅してというものであろうが、戦慄が走るようなこの行為は何を表わすものなのか?これは幼児の母親の肌を求める感情と性欲が合体した恐るべきモンスターの仕業なのである。成人がこの副作用を発症すれば異常のない知識、記憶、体を幼児の感情がコントロールすることによってこのようなことが起こりうる。異常とも思える性欲は母親を求める幼い感情の表現なのだ。しかし母親はもちろん、父親も社会もそれを認める事は出来ないから精神的に満たされる事は無く「負の記憶」だけが蓄積されて行くことになった。
 「負の性格」と「負の記憶」がこれほど相乗した例はないだろう。抗うつ薬パキシルの副作用「せん妄」がきっかけとなって事件は起きる。しかし事件後に薬を止めても後悔や反省が表れることはなく副作用説は否定される。せん妄が起きてはいてもそれは頭のどこかにあったものが拡大したものだから正常な自分がした事ではないという認識はないのだろう。自分がおかしかった事を認識することさえできず「負の記憶」が積み重ねられた幼児の感情はふてぶてしい悪魔を作り出し時間が経過しても後悔も反省も表れることはない。
 裁判で悪態をつきながらも自ら死刑を望み処刑された。しかし罪から逃れるために精神科を利用する人間が反省しているわけでもなく死刑を望むのはおかしくないだろうか。これもまた幼児化の典型的な症状の一つで死ぬことによって自らを悪のヒーローとして讃え上げようとする行為だと思われる。幼児は死を認識することも死の恐怖を持つ事もない。
 最後の最後まで悪態をつきうす笑いを浮かべるこの犯人を処刑しても「刑」としても意味をなさず「抑止」にもならない。被害者の家族にはやり場の無い怒りだけが残される。犯人は生きていない方が世の中の為だったことも確かだとは思うが、精神科と関わらなければもう少しましな人生があったかもしれない

息子に起きたこの副作用の詳細については下記を参照してほしい。

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