不可解な凶悪事件の原因が精神科の薬であることを指摘したのはもちろん私が初めてではない。人権団体の関係者を中心にかなり前から関連が指摘されていて、最近になって月刊誌などでも取り上げられるようにもなってきた。しかし、関連を指摘されている凶悪事件で副作用による心神耗弱が認められた例はごくわずかであり、ほとんどは弁護側からさえ副作用の可能性は指摘されることが無いのはどうしてなのだろう?

ご存じない方が多いとは思うが抗うつ薬(SSRI)の一部に「攻撃性が増す」副作用があること自体は厚生労働省も認めていて、米に遅れること5年の2009年に薬の使用上の注意を改訂している。しかし、その後も事件との関連が認められた例が増えているわけではないのはどうしてなのだろう?もっともこの事実を知らない精神科医も多く、患者には一切知らされることはないのだが。

実は抗うつ薬の副作用として「攻撃性が増す」現象が起きることはもはや否定することの出来ない事実なのだが、その詳細なメカニズムがいまだ解明されていないのだ。

副作用説を唱える方々や良心的な精神科医がその原因としているのが「脳内物質異常説」である。脳の神経細胞間の情報伝達を行なうのがアドレナリンやセロトニンといった脳内物質であり、その分泌量の異常によってうつ病などが起きるとされる。抗うつ薬はその分泌量を適正化することによって症状の改善を図る薬なのだが、体質などによって目的外の脳内物質の異常を起こし「攻撃性が増す」という症状が起きるという理論である。
 「キレる」という症状があることは多くの人が知っている。普段はおとなしい人が興奮や怒りによって精神的な極限状態にさらされると別人のように凶暴で攻撃的になるものである。これは脳内物質の異常分泌が原因であって、生命の危険を回避するための本能的な現象と思われる。つまりこれと同じことが薬によって起きるということである。

薬によって感情が左右され妻もあやうく死ぬところだったし、息子も直接の副作用として錯乱を起こし恐ろしい別人に変わった。「攻撃性が増す」副作用があることは明確なはずなのに、多くの事件でそれが認められていないのはなぜなのだろう?

多くの凶悪事件が副作用と直接結びつかない大きな理由は、脳内物質の異常によって「攻撃性が増した」ことが原因で凶悪事件が起きたと説明するには多くの矛盾が存在するからである。

 主な矛盾点は次のようなものである。

   一時的な症状が見られない、恒常的な症状
一般の方の常識の中では副作用は薬の成分が体の中にある間起き、薬が抜ければ回復するというものだろう。脳内物質異常説もこの範疇のもので薬の成分が血中に存在するかどうかによって「心神耗弱」が判断されたりする。普通に考えれば薬をやめれば数日で血中濃度が下がり症状が治まるはずである。しかし、厚生労働省の報告書の中でも回復までの時間が100日以上と極端に長いものがある。息子の例でも近所の例でも回復まで少なくとも数年かかっている。直接的な作用で起きる錯乱やせん妄、焦燥感などの症状は間違いなく数日、どんなに長くても1~2週間で収まるはずなのだが、ほとんどの凶悪事件では錯乱や半錯乱状態のような一時的な症状が見られないか、異常な状態がいつまでたっても収まらず「もともとそういう性格だった」と判断するしかない状態なのである。しかし、そのような傾向は薬を飲むまでは一切見られていないという証言がある。

   幼児のような行動や言動の理由が見当たらない
脳内物質異常説では錯乱や不安になったり興奮したりすることはある程度説明がつくが日常的に子どもっぽい行動や言動があることの理由付けができない。多くの症例で甘えたり、すねたり、わがままだったり、抑制がきかなかったりという、まるで幼児のような行動、言動が恒常的に見受けられる。それがどこから来るのか誰も明確に説明できていないし、薬を飲む以前にはそのような傾向はない。

   脳内物質異常で殺人が起きるか
自分という人格をまるで失っている錯乱やせん妄の状態なら可能性はあるが、多くの凶悪事件はそのような様子が見られない中で起きている。脳内物質の異常でイライラしたり感情的になったりということがたとえ起きても、それまで犯罪と縁のなかった人間がいきなり猟奇的な殺人を犯すだろうか?人格が全く別のものにならない限りありえないのではないか?この疑問が事件の副作用との関連を否定する原因となっている。


 副作用論を唱える方々もこれらの矛盾については口をつぐんできた。事件を検証していけばつじつまが合わないことは明白で、この理論を声高に叫べば叫ぶほど「副作用ではない」と言い張る製薬会社や精神科医を有利にしてしまう結果に繋がっていたことも否めないと思う。これらの矛盾を埋める理論はこれまで存在しなかった。薬が脳に半永久的なダメージを与えるという概念が存在しなかったのだ。
 私の息子は同級生に比べやや精神年齢が低く多少わがままで言うことは聞かなかったが、動物が好きでやさしい面も持ち合わせていた。その息子がたった2粒の抗不安薬によって猫や犬を虐待し「殺したら面白いのに」というような言葉さえ発する人間に豹変した。もちろん一時的症状ではなく回復に3年以上の時間を要した。
 私は息子の3年の記録からその症状が前頭葉の萎縮によって感情記憶が喪失し、知識記憶はそのままに感情だけが半永久的に幼児化する「感情記憶の喪失」であることを突き止めた。幼児化した感情が正常な知識記憶をコントロールすることができずに凶悪犯罪に繋がって行くのである。すべてのつじつまが合い、薬と凶悪犯罪を直接結びつけることができる唯一の真実である。

息子に起きたこの副作用の詳細は下記を参照してほしい
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