抗不安薬はストレスによる症状には効果がなく統合失調症に悪化させる
抗不安薬、睡眠薬、安定剤・・・何といういい響きだろう。日々人間関係のストレスに神経をすり減らす毎日を送っている人にとっては「救いの女神」のような名前である。眠くなる以上の副作用などあるとは誰も思わない。かく言う私もそう思っていたのだから致し方ない。大量に服用すれば「眠るように」死ねると誰でも思っている。雅子様が服用したのもほぼ抗不安薬に間違いないが「性格が変わった」ことが副作用だと言う人はいない。抗うつ薬の副作用についてはメディアでも時々取り上げられるが抗不安薬については2012年に東京新聞が取り上げたのみだと思われる。これらの薬は名前は違っても「同じ」薬である。
人は皆ストレスを抱えて生きている。酒やたばこが体に悪いとわかっていてもこの世から無くならないのはそのためだろう。よく「ストレス解消」という言葉が使われるが、どちらもやらない私は「酒やたばこでストレスが無くなるのか?」と懐疑的だった。
ところが酒には「抗不安」「催眠」効果があることが「科学的に証明」されている。帝京科学大学眞﨑教授の著書「酒乱になる人、ならない人」(新潮社)によると「抗不安薬」と同じ作用をエタノールが起こすことによるものらしい。鎮静効果を持つ脳内化学物質GABAの分泌を促すことによって「抗不安」「催眠」効果が得られるということのようだ。お酒を飲んで「ストレス」が解消されたような思いに浸れること、眠くなってしまうことには「酔っぱらう」作用以外のエタノールの効果によるものなのだ。
同じ作用のある酒で「抗不安」「催眠」効果が得られるのなら酩酊作用が無い、消化系にも影響が無い、二日酔いも無い抗不安薬を使えば簡単にストレスが解消され、不眠が解消される、誰でもそう思う。
酒には「害」がある。普段はおとなしい人が酒を飲むと人が変わったように暴力をふるったりする「酒乱」がその一つである。そういうことがあることは誰でも知っているが「鎮静効果」があるはずの酒がなぜこの現象を起こすのだろうか?眞﨑教授はエタノールとエタノールの二次生成物アセトアルデヒドの分解能力の組み合わせ(遺伝要因)によって酒乱を起こしやすいタイプがあるとしているが、なぜ酒乱が起きるのかについては明言を避けている。一方で思春期に大量の飲酒によってヤングアルコホリック症候群という症状が起きることを指摘している。人格異常、精神障害、過食症など特徴的な症状が現れるとされる。これは思春期にエタノールが脳の神経細胞のアポトーシス(自殺現象)を起こすことによるものでエタノールがNMDA受容体の機能を低下させることが原因らしく、シナプス形成が盛んな思春期に起こりやすいのだという。大人の「酒乱」もこれと同じことが起きると考えれば説明がつく。
NMDA受容体仮説によって統合失調症がNMDA受容体の機能低下、神経細胞のアポトーシスによって起きることが証明されている。つまりヤングアルコホリックの正体は「統合失調症」だということになる。抗不安薬がエタノールと同じ効果があるということは「思春期に抗不安薬を服用すれば統合失調症が起きる」という結論は簡単に導き出せる。この結論を眞﨑教授は出さなかった。あえてパンドラの箱を開けることを避けたのだろう。この時点で警告を出していたら佐世保の事件は起きなかったかもしれないのに。
NMDA受容体仮説によれば統合失調症の発症は「ストレスに弱い遺伝特性」が前提となっている。「ストレスに弱い遺伝特性」を持つ人が繰り返しストレスにさらされることによってストレス脆弱性が増していく。そこに大きなストレスが与えられることによって大規模な神経細胞のアポトーシスが起き統合失調症を発症するのだという。
さあ複雑なことになってきた。ストレスを解消するはずの薬が思春期に統合失調症を起こす、統合失調症はストレスによって起きる・・・つまりストレスと抗不安薬は同じ効果を脳にもたらす、ということになる。ここですべての常識は崩れ去って行く。抗不安薬はストレスを解消するどころか「加速」させるのである。これはどういうことなのか?
抗不安薬がGABAを増やす効果があること自体は間違っているわけでは無い。ただしGABAを分泌させる機能が正常な人に限ってのことである。ストレスに弱い遺伝特性「COMT遺伝子多型」の人はGABA・ドーパミン・ノルアドレナリンなどを作り出す機能に欠陥がある。これにはNMDA受容体の機能が関わっている。簡単に言えば加工能力に限界がある人に原材料を大量に与えても加工品は増えず原材料が「あふれてしまう」ということで、あふれた原材料が神経細胞のアポトーシスを起こしてしまい統合失調症を引き起こす、ということなのである。思春期には「ストレスに弱い遺伝特性」と同じ状態が作られてしまい、「ストレスに弱い遺伝特性」を持っている人はさらにストレス脆弱性が増していくということになる。これが統合失調症が思春期に起こりやすい理由である。
抗不安薬はストレスに弱い遺伝特性を持たない人の「漠然とした不安」には効果がある、と考えられる。しかしストレスによる不安を抱える人、ストレスによって適応障害、PTSD、引きこもり、不登校、うつ症状などの疾患をすでに発症している人には効果が無いばかりか症状を悪化させ「統合失調症を発症させる」のである。何より証拠には薬の添付文書に「統合失調症の発症・悪化」が明記されている。同じ記述は「抗うつ薬」にもある。これらの精神疾患は初期の統合失調症が「誤診」されている事例が多いことが明らかになっている。
COMT遺伝子多型は欧米には少なく日本人には多数存在する可能性が高い。欧米では少ないこの副作用が日本では多発するということである。欧米の精神科医療体系をそのまま持ち込んで疑わなかった精神科医の責任である。
昨年PTSDの治療方針が改定された。PTSDには抗不安薬が「効かない」ので薬を使わない治療を勧めるという「異例」のものである。効果が無いだけなら出しておけば利益になるはずである。貧乏人の財布を心配してくれるほど「良心的」な業界でないことは言わずもがな、である。PTSDが統合失調症に「悪化」する事例が多発して、表面化する前に幕引きを計ろうという企みなのだろう。しかし誰もそのことに疑問を感じる様子はない。
抗不安薬を服用した息子に何が起きたのかは下記を参照してほしい。これは希少例ではなく思春期に抗不安薬を服用すれば100%確実に起きることである。
http://toshioy001.wix.com/tougou