「強きを助け弱きをくじく」ことで有名な週刊誌に柏市通り魔事件の犯人が「統合失調症」だという記事が掲載された。週刊誌がこの手の事件を「病気」だと認めることは珍しい。もっとも、それで「無罪」にするなどとんでもないというような内容であることは間違いないだろうが。
「意味不明な発言をしていて警察は責任能力の有無について慎重に調べている」という文章を最近よく目にする。柏市の事件を始め、アンネの日記事件、黒子のバスケ脅迫事件、札幌幼女誘拐事件、山口連続放火殺害事件・・・。この文章の意味は「頭がおかしい」「キチガイ」(差別用語ではあるが一般市民の認識はこの言葉の方が正しいのであえて使わせていただく)の可能性が高いということだ。この状態は精神病であり病名は「統合失調症」である。最近起きたベビーシッター幼児殺害事件もそういう見方をすれば合点がいく。
ところが精神鑑定では「統合失調症」という結果が出ることは少ない。その大きな理由は週刊誌が危惧するように「無罪」になるからである。被害者が死亡しているような事件では有罪にしなければ世論が収まらないから検察側に有利な診断をする精神鑑定が求められることになり「統合失調症」の人間が裁判で「有罪」とされていく。
統合失調症は以前は「精神分裂病」と呼ばれた精神疾患で「まともなものの考え方ができない」病気である。後天的なものであって、いわゆる「知恵遅れ」ではなく知識記憶はある程度まともだが、幻覚、幻聴、妄想に支配され理解不能な言動や行動が表れるというものである。
統合失調症による犯罪の特徴は、計画的で犯行時の記憶はしっかりしているが、動機があいまいなのはもちろん、計画がずさんで一貫性がなく、多くの証拠を残し、捕まるように誘導さえする。逮捕されても意味不明で妄想のような話をし、初めて人を殺しても罪の意識を感じることもなく、薄笑いを浮かべ反省も後悔も謝罪もない、というようなものだ。
刑罰の意味は本人に罪を認識させ後悔と反省を促す意味と、一般市民に対し「犯罪を犯すとこういう刑が与えられますからやらないでくださいね」という犯罪抑止の意味があるが、統合失調症の犯人に対してはどちらも全く意味をなさない。ただ世論が納得しないから、被害者の気持ちを考えたら、という理由で「有罪」にされていくのである。
「統合失調症」は100人に1人程度が発症する病気と言われている。特に珍しい病気ではなくあなたの周りにも必ずいるということである。「殺人鬼」になるような人間が近くにいると考えれば怖くなるだろうがもちろん「統合失調症」がすぐに「犯罪」に結びつくわけではないのでくれぐれも誤解の無いように。
範囲の広い病気で、その診断基準はかなりあいまいである。「心の病」を扱うクリニックが乱立し知識そのものを持たない精神科医が増えている現実もあり、正確な診断が下されず別の病名をつけられることも多い。
統合失調症がどのような病気であるかわかりやすく解説してみよう。
ネット上の解説では〈幻覚や妄想という症状が特徴的な精神疾患です。それに伴って、人々と交流しながら家庭や社会で生活を営む機能が障害を受け(生活の障害)、「感覚・思考・行動が病気のために歪んでいる」ことを自分で振り返って考えることが難しくなりやすい(病識の障害)、という特徴を併せもっています〉〈実年齢とはかけ離れた感情の状態となり、幻覚、幻聴や妄想、わけのわからない言動や行動が出現する〉という風に表現されている。
脳機能の障害やストレスが原因とされ、脳内化学物質ドーパミンの分泌異常によって引き起こされるというのが定説となっていたが、最近では前頭葉の萎縮が原因だとする専門家もいる。要するにまだ「よくわかっていない」病気なのである。
うつ病の原因は長い間「脳内化学物質セロトニンの分泌異常によって起きる」とされてきたが異論を唱える専門家も多い。要するにセロトニンの分泌異常は原因ではなく結果ではないかということだ。
この間違いと同じことが統合失調症にも当てはまると考えるべきだろう。すべてとは言い切れないが少なくともストレスによって起きる統合失調症の症状はドーパミンの異常では説明できないものが多い。
幻聴、幻覚と言われると?ということになってしまうが、明確な幻聴幻覚が認められる場合は少ないのでその事に目を奪われると病気の正体がつかめなくなる。
わかりやすく解説してみよう。
人の情動行動はおおむね次のような図式で成り立っている。
〈通常の情動行動〉
経験による判断基準 記憶・知識
(感情の記憶)
↑↓ ↑↓
本能・欲望・欲求 → 理性・社会性・愛情 → 言動・行動
(大脳辺縁系) (前頭葉) (大脳)
この図式が統合失調症の場合はこのようになる
〈統合失調症の情動行動〉 記憶・知識
↑↓
本能・欲望・欲求 → → → → → → → 言動・行動
(大脳辺縁系) (前頭葉) (大脳)
例えば上司に理不尽な注意を受けた時に心の中で「いつか殺してやる」と思ったとしよう。もちろんたいていの場合それは行動に移される事はない。それは「殺せば殺人犯として捕まって人生が終わってしまう」「上司にも家族がいる」「理解のある面もあるじゃないか」「そんなこと自分にできるはずもない」というような「理性」が働くからである。もっと身近な「おいしいものをお腹いっぱい食べたい」という欲求を考えてみよう。もし欲求のまま行動していたら「太ってしまう」「お金がかかる」「体に良くない」とほとんどの人は考えるものなのだが誘惑に勝てない一部の人は肥満症になってしまう。これも病的な場合は一種の統合失調症でストレスによって引き起こされる拒食症や過食症といった症状も無論「統合失調症」ということになる。
要するに人間関係や経験を通して学ぶ理性や社会性、愛情などの「感情の記憶」が欠け落ちてしまうことによって起きる症状なのである。(病気の範囲が広いのですべてが当てはまるわけではない)
先にも述べたように後天的なものであってストレスによって発症する。思春期や青年期に多く発症する事が知られていてうつ病と同じような病気と思われていた引きこもり、不登校、適応障害、不安障害、強迫性障害、家庭内暴力などのほとんどが「統合失調症」であることは意外と知られていないし、精神科医さえ知らない「事実」である。
http://www.health.ne.jp/library/schizophrenia/index.html
さて、柏市の事件では薬物によって「統合失調症」が発症したことは間違いない。もともと性格が悪かったことも否めないがそれもストレスによる「統合失調症」であって、薬物によって極端に「悪化」したと考えるべきだろう。薬物を服用しても全員が「統合失調症」になるわけではない。統合失調症になる人ならない人の違いはどこにあるのだろう?このことについて研究した人はいない。この点が明確にならない限り「薬物を薄めたもの」ともいえる「抗不安薬」「抗うつ薬」が統合失調症を発症、悪化させることを否定できないではないか。添付文書に「統合失調症の発症、悪化」が間違いなく記載されているのだから間違いない。
ここまで因果関係がはっきりしているのに誰もこの事に触れようとしない。統合失調症と診断されれば「抗精神病薬」が処方されるがまともに診断できないヤブ医者は「抗不安薬」や「抗うつ薬」を処方する。かくして「人工の統合失調症患者」が作られて行く。それなのに「性格の変わる副作用など存在しない」「もともとの精神疾患が悪化した」などと平気な顔をして言っているのだからあきれるよりほかない。この病気について知識を持たないジャーナリストも精神科医の言う事を疑わない。Y新聞の記者は「統合失調症は一生治らないからあなたの言う事は間違っている」と平気で言った。医療担当の記者がこの程度の知識ではこの事実が明らかにされないのも当然としか言いようがない。
統合失調症の発症はストレスホルモンの過剰分泌によってもたらされる何らかの二次生成物が前頭葉を萎縮破壊することによって起きると考えられる。モンゴロイドの一部とコーカソイドの一部、アボリジニにのみ存在するCOMT多型という遺伝特性が発症の鍵を握っている。
この病気によって犯罪を犯した者に必要なのは刑罰ではなく「正しい」医療である。ストレスの無い環境で社会性を学べば多くはまともな人間に戻る事が可能なのである。無罪にして社会に戻す必要はないが刑罰を与えても全く意味がない。刑罰が必要なのは多くの犯罪者を作り出している精神科医療である。
息子に起きたこの副作用の記録と考察は下記を参照してほしい
http://toshioy001.wix.com/tougou